自己破産をしたときに財産隠しをするリスク

自己破産時に財産隠しをするリスク

自己破産する際には、生活に必要な一部の財産を除き、ほぼすべての財産が差し押さえられてしまいます。
そのため、中には破産手続きをする前に財産の一部を隠してしまおうと考える人もいます。
はたして、本当に財産を隠すことができるのでしょうか。
また、財産を隠していることがバレた場合、どのようになるのでしょうか。

財産を隠してバレることはないのか

財産を隠すという場合、どのような手口を考えるでしょうか。
多くの人が財産隠しとして思いつくのは、以下の2つの方法ではないかと思います。

①不動産や車の名義を家族など他の人の名義に変える
②保有している財産を目につかない場所に隠す

このうち①の名義変更については、家族の保有する財産であれば差し押さえの対象とはならないために行われます。
しかし、実はこの名義変更が、もっとも財産隠しがバレやすいものと言えます。
なぜなら、破産者から家族などへ名義を変更した履歴がしっかりと残っているためです。
土地や建物などの不動産であれば、法務局に登記の内容が残されています。
また、車の名義変更については、運輸局でその情報が管理されています。
名義変更を行った時期を見れば、財産隠しの意図があったものと判断されることとなるのです。

また②については、特に預金を引き出して現金を隠す場合に行われます。
しかし、自己破産の手続きを行う際には、過去2年分の預金通帳の明細が必要となります。
その中で、多額の現金を引き出したのにその使い道がわからないものがあれば、その内容を確認することとなります。
使途不明な支出がある場合には、その内容について厳しく追及されることとなるのです。
結果として、財産隠しを行っても、裁判所や破産管財人には通用しないのです。

財産隠しをしたことが発覚した場合のペナルティ

財産隠しをしたことが発覚すると、破産者はペナルティを科されることとなります。
そのペナルティには、3つのパターンがあります。

まず1つめに考えられるのは、破産が認められなくなることです。
自己破産を申立てて財産隠しが発覚すると、破産手続きを開始することができなくなります。
この場合、結果的に自己破産することはできないのです。

2つめのペナルティが、免責不許可となる場合です。
こちらは、破産手続開始決定後に破産管財人が財産の換価を進めるうえで、財産隠しが発覚した場合です。
もし、破産者が他の人に対して譲渡を偽装していた場合には、その相手方にも多大な迷惑がかかることとなります。
この場合、隠していた財産は通常の自己破産の手続き通りに没収され、債権者への支払にあてられます。
一方で、借金の免責については認められません。
そのため、借金の残高は減らすことができず、その後も返済を続ける必要があるのです。

最後に考えられるのが、財産隠匿による詐欺破産罪という犯罪に問われる場合です。
この場合、刑事罰を受けることとなり、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金が科されます。
また、財産隠しに加担した人も同様の罪に問われることとなるのです。

財産を残したい場合はほかの債務整理方法も検討

借金の返済ができなくなって自己破産するしかないと考える人も、まずは専門家である弁護士に相談してみましょう。
すると、債務整理の方法には、自己破産以外の方法もあることがわかると思います。
そして、自己破産以外の方法により債務整理ができれば、財産をすべて没収されないケースも数多くあるのです。
具体的にどのような方法があるのか、その内容とともに確認していきましょう。

個人再生

個人再生とは、破産を回避しながらも保有する債務の整理を行い、債務者の経済的更正を図る手続きのことです。
裁判所の手続きにより、債務の金額を強制的に大幅に減額し、あるいは長期の支払にすることで、個人の民事再生が行われます。

債務の額については、5分の1程度にまで減少させることが可能となります。
なお、債務の額が3000万円以上ある場合には、10分の1にまで減らすことが可能な場合もあります。
そして、減額した債務については、その後3年から5年間にわたって、長期間の分割払いとすることが認められます。

個人再生の場合、債務者が保有している財産について差し押さえられることはありません。
また、自己破産の場合は、手続き中に継続できない職業や資格がありますが、個人再生の場合はありません。
また、自宅を保有していて住宅ローンがある場合には、住宅ローンを除外して手続きを進めることができます。
そのため、自宅については処分の対象としないことも可能であり、非常に債務者にとってメリットのある債務整理の方法なのです。

一方、個人再生を利用するためには、自己破産よりも厳しい要件があります。
継続的に収入を得る見込みがなければ、債務の整理をして3年から5年の間にその債務を返済することができません。
そのため、収入を得る見込みがあるのか、そしてその返済が可能なのかについて調べられるのです。
また、個人再生を行った場合も、自己破産と同じようにその後、クレジットカードやローンの利用ができなくなります。
そのため、支払いが苦しくなったからといって新たな借金をすることはできないのです。
債務の額が大幅に圧縮される一方で、その後に負う義務も小さくないという点には注意が必要となります。

任意整理

任意整理は、債務者が債務の返済が難しくなった場合に、債権者と交渉してその返済計画を変更する手続きをいいます。
裁判所の手続きを通して行われるわけではないため、任意整理と呼ばれるのです。

債務者と債権者である金融機関や貸金業者、カード会社との間で交渉が成立すれば、和解契約が締結されます。
そして、その後は和解の内容にもとづいた返済を続けることとなるのです。

任意整理を行って返済条件を見直すと、毎月1回の返済で36回の分割払いとなるのが一般的です。
また、この時利息のカットを行い、元本のみの返済で済むように交渉を進めます。
したがって、純粋に返済額が減少するのは利息の支払いを軽減してもらう分だけというケースがほとんどです。
あとは、完済までの支払回数を伸ばしてもらうことができるかどうかの交渉を行うこととなります。

任意整理は裁判外の手続きであるため、自己破産のような制限は一切受けません。
財産が没収されることはなく、居住地の制限、職業や資格の制限などとも一切無関係なのです。
また、債務の減額交渉を行う債権者を選択することができます。
そのため、住宅ローンや自動車ローンについてはそのまま残しておくこともできるのです。

一方、任意整理は裁判外の交渉であるために、強制力はありません。
そのため、交渉してもその交渉に応じてもらえない可能性もあります。
また、財産か没収されない代わりに、任意整理を行った後も債務の返済は継続します。
債務の減額効果も限定的であるため、必ずしも返済が楽になるとは言えない場合もあるのです。