法人破産するとき、不動産登記の手続はどうなる?廃業時との違いも説明

不動産登記や不動産の扱い

破産しようとする会社が不動産を所有していることもあるでしょう。

この不動産についても破産財団として換価等の処分をされることになりますが、現金やその他動産等とは違い、不動産は登記をされています。
財産的価値が非常に高いため、権利関係を明示し取引上の混乱等を起こりにくくさせる必要があるからです。

そのため不動産を所有している会社はすでに不動産登記を経ていることかと思いますが、破産の手続きを進める場合、この不動産登記に関して何かしないといけないことはないのだろうかと思うかもしれません。

そこで、ここでは法人破産における不動産登記について言及していきます。

法人そのものの情報に関して裁判所書記官が手続きを行う

先に法人登記等のことに触れておきます。
不動産登記では、ある不動産を所有していたり、その他何かしらの権利関係をもっていたりする会社のみが関係する話ですが、法人そのものに関する登記はどんな会社でも関係します。

そのため法人破産に伴う登記事項の変更の必要が出てきますが、破産法では会社代表者が直接手続きを行う必要はないことが定められており、裁判所書記官が職権で管轄の裁判所に嘱託することとなっています

不動産登記は破産管財人が行う

上のように、会社が破産をしたこと自体の事実やこれに伴う登記については、裁判所書記官が手続きをやってくれるため、代表者が申請をする必要はありません。
しかも登記費用もかかりません。

不動産登記ではどのように運用されているのでしょうか。

実は不動産登記に関しても代表者が申請をする必要はありません。
なぜなら破産手続が開始されて以後の財産管理の権限は破産管財人に移るからです。
代表者に処分権限はなくなるため、換価するための不動産売買から登記に関することまで、広範に管財人が業務遂行することになります。

裁判所書記官がこれを行うとなれば効率が悪いということもあり、管財人がすべて行うものと扱われています。

ただし管財人の仕事が増えるほど引継予納金としてかかる破産費用が大きくなってきますので、負債総額だけでなく、不動産の所有数やその価額がとても大きな場合等には、その手続の負担分としてより多くのお金を予納することになるでしょう。

破産管財人は否認登記をすることもできる

管財人は会社がした売買契約等に関して、これを否認することもできます。
そしてこれに伴う登記を職権で行うことになります。

例えば不動産売買が成立するとその登記をしなければなりませんが、否認をしたときにはその否認をしたという事実についての登記もすることになるのです。

なお、否認の登記について破産手続開始決定の取消・破産手続の廃止が決まったときにも職権でこれが抹消されます。

不動産を賃借していたとき

オフィスとして利用している不動産が、賃借されているケースも珍しくありません。

管財人は破産財団のすべてにつき権限を有することになりますが、もともと所有していない不動産に関しては換価されるわけではなく、契約を解約し、賃貸人に返すことになります。

廃業のときとは手続きがことなることに注意

法人破産は経営状況が破綻することで採る手続です。

これに対し「廃業」は、経営状況の良し悪しに関係なく、自ら事業を止めることを言います。

そのため、ここまでで説明してきたように管財人や裁判所書記官が登場し、登記申請の手続きをしてくれるということはありません。
自ら手続きを行わなければならず、当然費用もかかってきます。

そのため、管財人や裁判所書記官が職権で動いてくれるのは法人破産の際にだけ行われる例外的なものであると覚えておき、混乱のないようにしましょう。