自己破産をしても残せる財産

自己破産をしても残せる財産(自由財産)

自己破産すると、その時点で保有している一切の財産が差し押さえの対象となります。
しかし、実際には差し押さえの対象とならないことが法律で決められている財産もあります。
このような財産のことを自由財産と言います。

自由財産として差し押さえの対象から除外するのは、破産者が破産後の生活ができるようにするためです。
自己破産は、借金の返済を免除することだけが目的ではなく、その後の破産者の生活を再建する必要もあるのです。
そのため、生活再建に必要な財産については差し押さえることができないとしているのです。

破産手続開始決定後に取得した財産(新得財産)

自己破産した時に換価して債権者への返済にあてられるのは、破産した時点で保有している財産に限られます。
そのため、破産手続き開始決定の後に獲得した財産は、差し押さえの対象にはなりません

注意が必要なのは、財産の形を変えても新たに取得したことにはならない点です。
たとえば、破産手続きが開始してから、預金口座の残高を利用して株式を購入したとします。
この場合、破産手続開始決定後に有価証券を取得していますが、その前から預金口座を保有しています。
そのため、このような財産については新得財産にはなりません。
破産手続開始決定後に支給された給料などが新得財産に該当します。

法律で差し押さえが禁止されている財産(差押禁止財産)

破産法には、差し押さえをすることのできない財産についての規定を設けています。
そして、その内容は民事執行法に規定されている差押禁止動産や差押禁止債権の内容にもとづくものとされています。

差押禁止動産として規定されている主な財産は、以下のとおりです。
生活に欠くことのできない衣服、神具、家具など
法律には明記されていませんが、洗濯機や冷蔵庫、パソコンなどの家電も含まれます。
ただし、2台以上ある場合は1台を残して差し押さえられる、高級なものであれば差し押さえられるなどの取り扱いもあります。
②債務者の1か月間の生活に必要な食糧及び燃料
③職業に応じて業務に欠かすことのできない器具その他
農業従事者の農具や肥料、建設業従事者の工具などが該当します。
④実印その他の印
この他にも、数多くの動産が生活に必要な財産として法律上、差し押さえが禁止されています。

また、差押禁止債権として規定されているものには、以下のようなものがあります。
①給料や賞与、退職金など
これらの債権は、全額が差し押さえの対象となるわけではありません。
原則として4分の1相当額が差し押さえの対象となり、4分の3については差し押さえをすることができないのです。
②年金など
年金や生活保護・児童手当の受給権については、個別に受給する権利が保護されています。
そのため、1円たりとも差し押さえをすることはできないのです。

99万円以下の現金

手元にある現金については、生活のために必要な資金であるため、差し押さえが禁止されます。
ただし、多額の現金を保有している場合には、生活費として必要な額を上回るものとして、差し押さえられます。

民事執行法においては、差し押さえが禁止される現金は66万円までとされています。
しかし、自己破産の場合には破産者の生活再建のためにより多額の現金が必要であると考えられます。
そこで、破産法では99万円以下の現金が自由財産として認められるのです。

自由財産の拡張がされた財産

自由財産の拡張とは、裁判所が特別に自由財産とすることを認めた財産を言います。
本来は自由財産にはならないものであっても、個別の事情を勘案して、差し押さえの対象からはずすことが認められる場合があります。

具体例として、2つのケースをご紹介します。
まず1つめは、車が自由財産として認められる場合です。
車については、通常は換価すべき財産として差し押さえられます。
しかし、破産者の生活に車が必要不可欠であり、代替の交通機関もないような場合には、車をそのまま保有することができるのです。
田舎で公共交通機関がない中、通院や介護のために車を使っているなどの事情があれば、自由財産として認められる可能性があります。
また、車自体の価値が高くなく、換価してもしなくても影響がほとんどない場合は、差し押さえられない可能性が高くなります。

破産財団から放棄された財産

破産者が保有する財産については、基本的にすべてが換価処分されることとなります。
しかし、破産管財人が換価処分しないと判断して、破産財団から放棄されることがあります。
ただ、この判断については裁判所や破産管財人の意向によるものであり、破産者として判断できるわけではありません。