会社の経営状態が悪化してくると、選択肢の一つとして法人破産を検討することもあります。
しかし状況が悪化したからといってすぐに法人破産に踏み切るべきではありません。
多くの関係者に影響を及ぼすため、慎重に検討しなければならないのです。
今回は、法人破産をする前にすべきことを簡単にまとめていきます。
破産しそうな状況を知られないようにする
法人破産をするかどうか、検討中の段階でも、その事実を外部には知られないようにしなければなりません。
それは、結果的に破産をしなかった場合でも破産した場合であっても同様です。
破産をしないケースでは、新たに融資を受けることやスポンサー等の支援を得るなどして改善を図ることがあります。
しかしそのためには会社の信用が必要です。
破綻寸前の経営状態では融資も受けることが困難になってしまうからです。
一方、破産をする場合であっても、債権者に状況を知られると強引な取り立てをされる可能性が出てきます。
執拗に催促の電話がかかってくるかもしれません。
弁護士に依頼し取立ては防ぐこともできますが、必要以上に騒ぎ立てられることもあります。
そのため、いずれにしても破産を検討していることは知られないようにすべきです。
従業員にも知られないように
法人破産の検討をしていることは、外部だけでなく、従業員にも知られないよう注意しましょう。
従業員から外部に漏れるおそれもあるからです。
基本的に法人破産が行われると従業員は解雇されます。
しかし破産について知らせておくのは社内でもごく一部の者に限られるでしょう。
法人破産を決意したあとで注意すべきこと
破産手続を始めようとする場合、その直前の活動において買掛債務を負うことは避けるべきでしょう。
例えば新しく仕入れをするようなケースです。
破産により免責されることを見越して債務を負ったと思われ、破産の申立て後に紛争を引き起こす原因となりかねません。
破産に関して不正を働くと犯罪行為として罰せられることもありますので十分注意する必要があります。
そこで仕入れを行う場合でも、破産に関しては従業員に知られないように配慮しつつ、仕入れ量の抑制などを図るようにしましょう。
仕入をする場合であっても、現金で支払うなどの工夫をしておくといいでしょう。
従業員の解雇の検討
通常は破産手続開始決定の前に従業員は解雇します。
しかし突然解雇をする場合、解雇予告手当を支払わなければなりませんので、この点覚えておく必要があるでしょう。
解雇予告手当は、実際に解雇する日から30日以内の予告であった場合に支払わなければなりません。
従業員のためにも事前に伝えておきたいところですが、外部への情報漏れなどとのバランスも考慮しつつ予告日を決定しましょう。
従業員を解雇しないケースもある
経理担当や人事担当などの従業員は、破産申し立て時にも解雇しないことがあります。
仕掛業務などが残っていたりすると、その従業員の協力を得て処理を済ませる必要がでてきます。
そこで従業員を説得して協力を得るようにしましょう。
その場合、破産申立てにも費用は必要ですが、残る従業員への給与も確保しておかなければなりません。
法人破産をするための準備
法人破産をするには、裁判所に申立てを行わなければなりません。
破産手続開始の申立書を出します。
ただし申立書には各種必要書類の添付が必要ですので、事前に調査を行い、準備しておくことが必要です。
破産することが知られてからではスムーズに進められなくなりますので、前もって行動を起こしておきましょう。
債権者を調査する
債権者一覧表の作成が必要になるため、債権者の調査を行います。
これまでの事業活動を通して作成されてきた契約書や請求書、各種帳簿を使って調べていきます。
領収書や預金通帳なども調べるといいでしょう。
また従業員等からの聴取も行い、債権者調査に漏れがないようにしましょう。
財産を調査する
法人の保有していた財産は、その後破産管財人が管理していくことになります。
そして最終的に財産は換価され、債権者へ配当されます。
そこで事前に、会社がどれだけの財産を持っているのかしっかりと調べなければなりません。
具体的には、財産目録を作成しこれを申立書に添付することになります。
内容としては、例えば現金や預貯金、貸付金や売掛金などの債権、所有する不動産および車両、積立金、商品の在庫などが財産となります。
また、財産を調べるにあたり債権者の調査同様、契約書や請求書、領収書、預貯金通帳などをチェックすることになります。
決算書や帳簿も確認することになるでしょう。
さらに従業員等からも聴取しておきましょう。
申立書の提出
ここまでの調査から得られた資料等を添付し、裁判所に破産の申立を行いましょう。
債権者一覧表、資産状況等を示す書類、契約書など、弁護士に相談し自社に必要なリストを挙げてもらうとスムーズに進められます。
同時に、在庫品や資産の保全等を行い財産が散逸しないように対策を取ることも必要かもしれません。