法人破産したときの登記について、手続や費用その効力について解説

法人破産における登記の手続き

登記は破産に限らず、会社を設立したりその他重要な変更等が生じたりしたときにはそのことに関して手続が必要とされます。
登記をしないと色んな取引の場面で混乱が生じますし、法律で登記を求められている事項につきいつまでもその手続をせずに放置していると処罰されることもあります。
それほど登記というものは重要なものであり、きちんと手続きを経ていることが一般的に求められています。

登記の存在意義の一つには、会社が存在していることを示すということが挙げられますが、破産をした場合にはどのような扱いとなるのでしょうか。

以下では法人破産をしたときの登記について解説します。

破産に関する登記内容

破産をする場合、タイミングとしては「破産手続開始の決定があったとき」「保全管理の命令が出されたとき」「手続の取消があったとき」「手続の終結決定があったとき」などがあります。

手続の進行具合やそのときの状況に応じてそれぞれ登記されるのです。

例えば破産手続の開始決定に関しては、その決定を受けた年月日と時刻、手続が開始された旨と管財人の氏名・住所等、そして登記の年月日も記載されます。

登記は誰にどのような権利が存するのか公示する目的も持ちますので、手続開始後の財産につき管理する権限を有する管財人のこともしっかりと登記事項として掲載されます。
これは管財人と取引をする相手方のためという意味合いが強いため、登記には、その職務内容なども載せられることになります。

破産手続終結の決定に関しては、債権者への配当を経て、管財人から任務終了の報告後なされることになっています。
そのため終結の登記に関しても、管財人による終結の報告後、これに異議を述べる期間を過ぎてからのタイミングでなされます。

代表者が登記申請をする必要はない

上記のように、法人破産をする上では様々な事項が登記されることとなります。

しかし実際に代表者等、会社の者が直接登記申請などの手続を行う必要はありません。
なぜなら裁判所書記官が登記を行うとして法定されているからです。

本来は登記内容に変更が生じると会社代表者に申請義務が生じるのですが、破産においては例外的にこの義務が生じません。

破産法では「破産手続開始の決定があったとき、裁判所書記官は職権で、登記を管轄の登記所に嘱託しないといけない。」とされています。

つまりこの場合においては代表者ではなく、裁判所書記官に嘱託の義務が発生するようになっています。

法人破産に関するその他変更点についても申請の必要はない

上では「開始の決定があったとき」としていましたが、開始決定以外の、その他法人破産に関する変更点が生じたときに関しても裁判所書記官が職権で登記所に嘱託することが定められています。

なぜ、このように規定されているかと言うと、破産に関する事項はその他基本的な事項に比べて公益性が高く、個人が行うより裁判所が主導すべきと考えられているからです。

費用も必要ない

本来は登記申請に費用がかかります。
その内容にもよりますが、3万円や6万円など、数万円から十数万円程度かかります。

しかしながら法人破産に関する登記では、申請等の手続が不要なだけでなく、費用の支払も必要がありません

法人破産の登記の効力

法人破産に関する登記の効力は通常とは異なります。
単に事実を公示し取引上の混乱を防ぐという、事実上の効力しか持ちません。

また破産手続が始まってからの不動産登記等には注意が必要です。

破産前にした不動産売買であっても、破産手続開始決定後に登記をしてしまうと本来の効力は期待できず、権利者に不利益が生じる可能性があります。
破産に伴う不正行為を防ぐためです。

登記権利者が当該破産を知らなかったのであれば例外的に有効なものとして扱われますが、すでに公告が行われていたのであれば、権利者も破産の事実を知ったものとして扱われてしまいますので、やはり破産直前の取引には注意が必要です。