法人破産と個人破産の違い!発生件数や実情を比較

法人破産と個人破産の大きな違い

法人破産も個人破産も、破産であることに変わりはありません。
しかし実情として、破産を行う主体が保有する財産や、債権者数には大きな違いがあります。

例えば個人の場合には、契約関係などが比較的シンプルで、あまり膨大な契約を締結していることはありません。
しかし法人の場合には多くの個人や法人と取引を交わしながら事業活動を行うことになるため、当然、個人に比べて多くの関係者が出てくることになります。

そうすると保有する財産や負債の額も大きくなり、一つの法人が破産することによる影響は個人に比べてかなり大きくなってきます。
取引先が当該会社に対して持っている債権が回収できなくなるだけでなく、当該会社に勤める従業員も、破産の事実を公表された後は仕事ができなくなります。突然言い渡されることが通常ですので、雇用保険等による救済は受けられるものの、急いで就職活動を行うことになるでしょう。

 

また、財産や債権者の多さは破産にかかる費用および所要期間を膨らませることにもなります。
個人破産の場合にはすでに換価すべき財産がないと評価され、同時廃止事件になることで、費用も期間も縮小して手続を進められる可能性も高くなります。

法人においても少額管財にすることでスピーディーに進行することが期待されますが、弁護士への依頼や財産が一定基準以下であることなどの条件を満たさなければなりません。

法人破産と個人破産の件数の違い

破産の発生件数に関しては、裁判所の公表する司法統計で確認することができます。
また、その件数の総数だけでなく、自然人つまり個人のする破産の件数や、法人のする破産の件数、さらにそれぞれの取下げや棄却、同時廃止・異時廃止の別も年度ごとに発表されています。

まず、令和元年における資料を見てみると、破産既済事件数の総数としては7万8829件あったことが分かります。そのうち個人のした自己破産は7万2307件、法人破産は6522件となっています。

個人破産のほうが件数としては多いことが分かりますが、もともと存在している分母数が圧倒的に自然人のほうが多いためこのような結果となっています。
そこで日本の人口約1億2500万人から割合を算出すると、人口の約0.06%が個人破産しているという結果になります。他方、国内の法人数約270万社から割合を算出すれば、約0.24%の割合で法人破産していることが算出されます。つまり、単純な割合で言えば、個人よりも法人破産のほうが4倍ほど発生しているということになります。

概算であるため、この数字自体から深い意味を読み取ることはできませんが、少なくとも個人の方が破産しやすいということではないということが分かったかと思います。

 

同様に平成30年、平成29年における資料を見てみると、総発生件数は現在にかけて徐々に増えているということが分かります。平成29年発表の資料では7万4499件であったものが、翌年には7万8014件、そしてその次に7万8829件となっています。

ただ内訳を確認すると、ここ数年、法人破産はあまり変動がないのに対して、個人破産が増加していることが読み取れます。

法人は消滅するが個人は消滅しない

法人かどうかによって手続きが異なるわけではありませんが、その後の在り方には大きな違いがあります。
それはその主体が消滅するかどうかです。

例えば法人が破産した場合、解散し、消滅することになります。
これに対し個人は破産をしたからといってその存在が消えるわけではありません。その後も家計を立て直し、生活をしていくことになります。
消滅する法人に比べれば、その後も破産をしたという経験を持ったまま生きていくことになるため、完全に縁の切れる法人破産とはそういった意味でも異なるものであると言えるでしょう。