同時廃止事件と管財事件の違いや、同時廃止事件になるための条件を解説

自己破産にもいくつかの進め方がある

自己破産は債務整理の一種で、当事者間のみの話し合いで解決を図る任意整理や、裁判所の関与は受けるものの債権者の多数の同意が求められる自己再生などと違い、強制力の強い手続きになります。
債権者や申立人、その他利害関係人に対し強い影響を与え、借金など負債を返済しきれなくなってどうしようもなくなったときの最終的な手段として捉えられています。

ただ、自己破産の中にもさらにその手続の進め方が分けられており、大きく「同時廃止」と「管財」の事件に分けることができます。

管財事件がスタンダード

分けられてはいるものの、基本とされる手続は管財事件の方です。

そしてこの場合、裁判所が(破産)管財人を選任することになり、申立人の財産は以後、管財人が管理していくことになります。
この管財人の仕事は、財産が多いほど・内容が複雑であるほど、多くなります。そのため、破産費用として支払うものの一種である「予納金」もおおむね比例して高くなってきます。

なぜなら予納金とは管財人に対する報酬としての意味合いが込められているからです。
具体的な金額は、債権者数および負債の総額に応じて決まってくると言われていますが、個別の金額設定はそれぞれの事情に合わせて定められます。

なお、管財事件ではただ管財人が本人の財産を管理するだけでなく、その後内容を調査し、換価処分が行われ、そこから債権者に対して配当がなされます。
自己破産が上手くいくと最終的には免責を受けることになりますが、そうだとしても債務者である申立人が保有している財産が残っているのであれば債権者にはその範囲内だけでも弁済するべきでしょう。
そのためにも管財人が仕事をし、全員が満足する額でないにしろ、債権者たちへ換価された財産が配られることとなります。

同時廃止事件は簡易な手続

一方同時廃止事件では管財人が存在しません
つまり、財産を細かく調査し換価、そして債権者たちに配当をするための担当者がいません。

これは財産の内容を評価した結果、配当すべきものがないとみられる場合に選択される手続きであるからです。換価および配当がなくなる結果、破産手続開始決定と同時に破産事件が廃止されることとなります。
そのため「同時廃止」事件と呼ばれています。

管財事件と比較した場合の大きな違いとしては、「費用が少なく済むこと」「手続に要する時間が短いこと」が挙げられます。期間に関しては、管財事件で半年から1年ほどかかると言われているのに対し、同時廃止事件では2,3ヶ月が目安とされています。かなり早く手続を終えることができ、その後の生活に素早く切り替えることが可能となります。

同時廃止になる条件

管財事件は原則的な手続であるため、特に同時廃止になるための条件に着目していきます。

具体的な金額等に関しては管轄の地方裁判所に問い合わせる必要がありますが、共通して言えることは「財産が一定基準以下である」ということです。例えば以下のような基準です。

  • 普通預金および現金の合計額が50万円以下であること
  • 自動車や退職金、保険金など、個別に着目した際、20万円以下に収まること

ただしこれらはあくまで一例であることに注意し、このような要素が評価されるという認識程度にとどめておくようにしましょう。
例として水戸地方裁判所での基準を見てみましょう。
ここでは、「現金が33万円以上なら管財事件とする」「預貯金や不動産、自動車、積立金、有価証券、事業設備など、20万円以上の個別財産があるなら管財事件とする」などと定められています。
水戸地方裁判所では、過去、資産総額50万円基準で評価していたところ、運用が変更されたという背景があります。

他の裁判所でもこのように基準が変更されることが起こり得るため、基準内に収められそうか不安な場合は、管轄の地方裁判所に問い合わせるか、ホームページを確認してその内容が記載されていないか見てみましょう。