破産管財人からの請求にはどこまで答えればいいの?

破産管財人には説明請求権がある

破産管財人には破産手続きをスムーズに進めるための権限として「説明請求権」が認められています。

説明請求権とは「調査のために説明を求める(事情聴取をする)権利」のことです。
破産管財人は財産調査などのために経営者に質問しますので、経営者は質問に対して答えなければいけません。

法人破産手続きに必要だからこそ、破産管財人には経営者などに説明を求める権限があるのです。

破産管財人からの請求に応えなければならない者

破産管財人には説明請求権があるといっても、破産と関係のない人に無制限に説明を求められるわけではありません。
破産管財人の説明責任に応じなければならない人についても法律で決まっています。
破産管財人からの請求に応えなければならない説明義務者は、以下の通りです。

・破産者
・破産者の代理人
・過去に破産者の代理人だった者
・法人の代表者や経営者など
・法人の従業員
・過去の法人の従業員だった者

破産管財人は以上のような人たちに、破産に関する必要事項の説明を求めることが可能です。
説明については口頭の説明に限られず、必要な書面の提出なども含まれます。

破産管財人からの請求に応じない説明義務者や虚偽の説明をした義務者には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金もしくは両方が科される可能性があります。

子会社も破産管財人からの請求に応えなければならない

破産管財人は法人の経営者などの説明義務者の他に、法人の子会社にも財産状況などについて説明を求めることが可能です。

・法人破産するのが株式会社の場合はその子会社
・株式会社以外で破産者が株主総会の議決権の過半数を有する会社
・破産者と子会社などが他株式会社の議決権の過半数を有するその他の株式会社  など

子会社に説明を求めるためには破産管財人が職務を行うために必要だと判断される場合のみです。

破産管財人からの請求に応じない子会社には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金もしくは両方が科される可能性があります。

破産管財人からの請求で聞かれる内容

破産管財人からの請求がある内容は多岐に渡ります。
破産管財人に答えた内容から優先的に処理すべき事項なども決めるため、法人破産申立て書の内容から記載にない破産にまつわる事項まで、広く聞かれると思っておくべきです。
破産管財人からの説明を求められる代表的な事項は以下の通りになります。

なお、それぞれの説明請求事項については追加で資料の提出を求められることもあるため注意してください。

法人の負債の内容や額

法人破産の手続きを進めるためにも、破産管財人は法人の負債について把握しなければいけません。
負債の契約内容や額、債権者などについて知っておかなければ、負債の清算や債権者への配当に差し支えるからです。
法人破産手続きの申立書の記載内容に沿って補足になるような情報や、記載内容からは読み取れないような情報について聞かれる可能性があります。

債権者の顔触れやそれぞれの対応

法人破産手続きの申立書に記載している債権者についても、あらためて破産管財人からの請求で説明を要する可能性があります。
債権者の顔触れや確認などの基本的な事項から、それぞれの債権者がどのようなことをしていたか(督促についてなど)、法人や経営者側がどのように応対していたかなども、請求に応じて説明する必要があるのです。

法人の資産の内容や状況

預金や現金、不動産や有価証券など法人の所有している資産について破産管財人からの請求に応じて説明しなければいけません。
資産についても法人破産手続きの申立書である程度のことはわかりますが、記載に誤りや勘違いがあるかもしれません。
あらためて法人の経営者に確認することで、隠された資産がないかなどの確認をする意図もあります。

従業員の有無か解雇の状況

法人破産では会社がなくなってしまうので、いずれにしろ従業員は解雇されます。
現状で従業員は残っているかどうかや、法人破産を申し立てるまでに従業員を解雇したかなどが確認事項です。
この他に従業員への給与の支払い状況などを破産管財人からの請求で説明しなければならない可能性もあります。

事業所の状況や契約について

法人の事業所の所在や数、賃貸借契約などの状況について破産管財人からの請求に応じて説明しなければいけません。
法人破産をすることで会社が消えますから、事業所も順次畳まなければいけないのです。
賃貸借契約などを結んでいる場合は事業所ごとに契約にも対処しなければならないため、破産管財人から説明を求められる可能性があります。

破産管財人からの請求に対する答え方

破産管財人からの請求に応じて説明義務を果たすときは4つのポイントに留意する必要があります。

破産管財人からの請求には誠実な態度を心がける

破産管財人は破産手続きの事務を進める存在ですが、破産手続きそのものを申し立てたのは破産管財人ではなく法人の経営者です。
破産管財人は事務の中心になる人であっても、あくまでサポーターになります。
破産管財人が聞くことは破産手続きを進めるために必要なことなので「協力してやっている」という態度ではなく、自分の経営している法人の破産手続きだということを意識して誠実な態度を心がけましょう。

破産管財人からの請求には積極的に協力する

破産管財人に追加の資料を求められた場合や説明を求められた場合は、積極的に協力する姿勢を見せることがポイントです。
求められた説明にはしっかり答え、準備して欲しいと言われた資料を迅速に準備することが破産管財人や裁判所の信頼を得ることにつながります。
破産手続きをスムーズに進めるためにも協力的に応じることが重要です。

破産管財人からの請求は説教ではない

破産管財人から説明を求められたときの説明義務を、お説教やお叱りだとはき違える債務者がいます。
破産管財人との面会や請求はあくまで手続きを進めるための情報収集です。
経営者に対して法人破産のお説教やお叱りをする場ではありません。

なお、破産管財人と会うときの服装については特に決まっていません。
あくまで説明の場であり質問の場なので、必要最低限のマナーや身だしなみで応じれば問題ありません。

破産管財人からの請求に虚偽で答えない

破産管財人から説明を求められたときにウソをついたり回答を拒絶したりすると、破産管財人や裁判所の心証を害することにつながります。
加えて、破産犯罪を問われる可能性もあるため注意してください。
虚偽や回答拒絶をすることで「財産を隠しているのではないか」などの疑いにもつながることがあるため、合わせて注意が必要です。

まとめ

破産管財人は法人破産手続きの事務で中心的な役割を果たすため、経営者などへの説明請求権が認められています。
法人破産手続きは申し立てればいいというわけではなく、破産管財人からの請求に協力する必要があるのです。
法人破産の事務は破産管財人が中心でも、申し立てたのは自分であることを忘れずに協力的かつ誠実な姿勢で臨みましょう。

破産管財人からの請求でわからないことや対応に迷うことがあれば、弁護士に相談するのが一番です。
法人破産手続きを滞りなく進めるためにも、手続きをサポートしてくれる弁護士探しからはじめてみてはいかがでしょう。