経営者保証に関するガイドラインの概要を説明!

「経営者保証に関するガイドライン」をご存知でしょうか。

実は中小企業を経営する者にとって非常に重要なことです。

当該ガイドラインが多く運用されるようになれば、経営者は円滑に融資を受けられるようになったり、事業承継、事業再生、M&Aなどが実施しやすくなったりするのです。

ここでは経営者保証に関するガイドラインについて、概要を紹介していきます。

経営者保証に関するガイドラインとは何か

経営者保証に関するガイドラインとは、中小企業団体や銀行、日本政策金融金庫といった、金融機関団体で共通に運用される自主的ルールのことです。

自主的ルールであるため、当該ガイドラインに記載されていることが全国あらゆる団体で適用されるような、法律のようなものではありません。

しかしながら、これまでの中小企業経営者の状況を鑑みて、改善を図るべくこのガイドラインの運用が少しずつ進んできています。

 

例えば、中小企業へ金融機関が融資をする場合、法人に対する融資であっても、経営者個人が連帯保証人にならないといけないという状況があります。

これは、そうしないといけないルールではなく、商慣習として日常的になされる運用の方法です。

しかし保証人になってしまうことで、法人破産をしたときに経営者個人も共倒れで自己破産に追い込まれることとなります。

 

そのため経営者が新たにスタートを切ることが難しくなってしまうことや、私生活に対する害も生じてしまうという問題があるのです。

そこでこのガイドラインでは、経営者個人に保証を求めないようにすることや、すでに保証契約をしている場合でも経営者の生活は確保するよう寛容な対応をすることなどが求められます。

経営者個人に保証を求めない

法人そのものと経営者個人は形式的にはまったく別物です。

しかし特に中小企業では金融機関から融資を受けるとき、法人と経営者個人が同等の扱いを受け、多額の借金を保証せざるを得ない状況があります。

そうすると、会社が返済しきれず倒産する場合、法人は消滅するためそれ以上返済する義務は免れることとなりますが、保証人は別です。

保証契約は主債務とは別の契約で締結するため、経営者個人との間で結んだ契約の履行は請求され得るのです。

会社規模で返済できなかったものですので経営者個人で返せるケースも稀で、多くは法人破産とともに経営者個人の自己破産も進められることとなります。

さらに私生活のほうでも悪影響が出て、家族を支えられなくなり離婚に至ることや、自殺をしてしまうといった事例も起こっています。

 

そこで、個人にまで保証を求めるという慣習をなくすよう、ガイドラインでは求められています。

ただし法人と個人が癒着しておらず、明確な分離がなされている場合にこのルールが適用されます。

経営者の生活の確保

次に重要となるのが経営者の生活を確保するための取決めです。

ここでは特に、すでに個人保証を負ってしまっている場合の対応について定められています。

 

要は、倒産後の自由財産を残すように配慮することや、最低限の生活をするための家などは残すように配慮する、という内容です。

もちろんあらゆる場合にこの運用をするということではなく、経営者が早期の事業再生や廃業等の決断をした場合などに配慮をしてあげようという趣旨です。

そこで自由財産である99万円だけでなく、その個人に必要な財産を検討し、さらに100万~360万円ほどを残すように配慮をすることが求められます。

自宅についても豪邸などを除いて、生活のために欠かせない家には住み続けられるように配慮しましょうと定められています。

保証債務を免除すること

次に、このガイドラインでは上述の確保された生活費等の財産を除いて、弁済しきれなかった債務については原則免除をすることが定められています。

生活ができる最低限以外の財産はすべて返済に使ったのなら再スタートを切るためにも免責してあげようという配慮です。

新たに事業を始めることや早期の事業再建を図るためにも重要なことです。

 

第三者保証人となった場合でも同様の免除が受けられます。

個人による破産との差

当該ガイドラインは、単なる個人的な破産の場合には適用されません。

その者がたまたま経営をしているとしても、それと関係なく個人的に借金をして破産に至るというケースでは通常通りの手続となります。

 

そのため、ただ個人がする破産と、法人破産に伴う経営者の履行責任については以下のような様々な違いが生じてきます。

  • 信用情報の登録:登録されない(破産だと登録される)
  • 自宅について:居住できる場合がある(破産だと換価される)
  • 残せる財産:自由財産に加え拡張自由財産の規定がある(破産では、基本的に現金99万円の自由財産)
  • 手続の進行:遅い(破産のほうが比較的早い)

様々なメリットがありますが、ガイドラインに則った場合、強制力のない私的整理であるため時間がかかってしまいますし、最終的に成立しないリスクもあります。

そのためどのような方針で進めるのかは、個別具体的に検討する必要があるでしょう。