滞納している税金が残ったまま法人破産をするとどうなるのか

破産手続の終了で滞納税金の支払い義務も消える

破産手続開始決定を裁判所から受けると、法人は解散することになります。
清算会社としてはその後もしばらく存続しますが、精算会社となってからは通常の業務をすることはなくなり精算を行うだけになります。
清算会社が法人格を失うのは精算後の破産手続終了時点です。
法人格が消えるということは債務者(税金の納付に関する債務を負っている主体)がいなくなるということであり、債権に関しても消滅することになります。
債権が税金に関するものであっても同様に消滅します。
つまり、滞納していた税金があったとしてもその支払い義務は消えてなくなるのです。

これは法人破産ならではの考え方と言えるでしょう。
なぜなら個人の破産では、個人そのものが消滅するわけではないからです。

 

税金は優先的に配当される

破産手続が終了すれば前項で説明した通り、会社に支払い義務はなくなります。
しかし破産手続とはすべての弁済義務を無条件で免れる手続ではありません。

残っている財産からは当然弁済をしていかなければならず、債権者たちには配当をすることになります。

配当の仕方に関しては、原則債権者に平等に行われるのが原則です。
しかし例外があり、優先的破産債権・劣後的破産債権・約定劣後破産債権・その他の破産債権、これらに分類できる場合はこの順に配当が行われると定められています。

ここではそれぞれの債権につき、細かく解説はしていきませんが、税金に関する債権はこの「優先的破産債権」に含まれるということを覚えておきましょう。

そのため滞納している税金は一般的な債権者より優先して配当がなされ、他にも従業員への給料が未払いになっている場合はこちらも優先的に支払われることになっています。

また「財団債権」というものがあり、こちらはより強力な債権で、破産手続によることなく破産財団から弁済を随時行うこととなっています。
破産財団とは破産手続を開始したあとの会社の財産のことを言います。
優先的破産債権は優先こそされるもののあくまで破産手続に則って配当が行われていましたが、財団債権は配当とは関係なく支払われていくため、結果的には最も優先される債権ということになります。

この債権は、例えば「破産管財人に対する報酬」「直近3か月以内の給料」、そして「納付期限から1年が経過していない税金」「納付期限が未だ到来していない税金」などもここに含まれます。

 

法人破産の後で個人に支払い義務が生じるケースもある

法人破産をすることで法人そのものが破産後も支払い義務を負うということは起こり得ません。
法人そのものがなくなるからです。

しかし、会社の債務に関して代表者等が保証人になっているケースは多く、その場合には補償契約に基づいて請求されることになります。
その結果、代表者も自己破産せざるを得ない事態も起こります。

税金については一般的な取引とは違って連帯保証人が求められることは基本的にありませんが、保証人を立てていた場合には法人破産をしても請求されてしまうことがあります。
例えば脱税などの疑いがある場合には信用を得るために保証が求められることがあるのです。

もう一つ、個人に支払い義務が生じるケースがあります。

それは会社の財産が不当に個人へと流れている場合です。

破産をする前に個人のお金として移していたりすると、個人が会社の保証人となっていなかったとしても滞納している税金等を支払うよう求められます。
実質的にその財産は会社のものだからです。

まとめ

破産の手続きを終了すればその後税金を滞納していたとしても支払いの義務はなくなります。
しかし一般債権に比べて優先的に配当がなされるなど、特別の扱いをすることは覚えておきましょう。
滞納している税金があれば付き合いのある取引先が回収できる分は減少することになります。

また、個人が保証している場合や不正を働いたときにはその個人に支払いを求められることもありますので注意しましょう。